タイ現地日系企業における、ERPシステム選定の難しさとは(1)
Date : 12-03-2026
ERPは企業の「デジタル化戦略」の最初の一歩
昨今どんな業種業態の企業にとっても、DX化の推進やAIの業務への活用といったいわゆる「デジタル化戦略」は、喫緊の課題として取り上げられています。これは単なる自社内での業務改善・効率化の取り組みのレベルにとどまらず、自らの企業価値を社外のステークホルダーへ示すための重要な指標のひとつとして求められるレベルなっていると言えます。
ERPは、これらDX化やAI活用に向けた最初の一歩となる情報システム基盤として、非常に重要な位置を占めています。しかしERPを導入したものの、業務・システムの統合と標準化がもしも不十分なレベルにとどまってしまえば、その先のデジタル情報活用には大きな制約が発生し、投資対効果が発揮できないばかりではなく、将来的には更に大幅なシステム追加投資が必要となってしまうこともあり得ます。
一方で、タイの多くの日系企業様にとって、ERPを起点とする企業のデジタル化戦略ロードマップを適切に描くことのできるような、日本人のIT担当者を抱えているケースは稀です。現地にはネットワークやPCのメンテナンスをするIT担当者しかいない、一方で日本本社のIT部門は多忙を理由に海外拠点の支援はなかなかしてくれない、というのが多くの企業様の実情ではないでしょうか。
弊社ではこれまで、タイ現地で40社以上(2026年2月現在)の企業様へ向けてERP導入のご支援をしてまいりました。また加えて、ヒアリング・ご提案を通じてさらに数多くの企業様のお困りごとを耳にしてまいりました。本コラムでは弊社のこれまでの経験をもとに、日系企業様がERPを検討・選定するにあたって直面する難しさと、その原因を紐解いていきたいと思います。
今のままではダメなことは分かっている、でも何から手を付ければ良いのか分からない
マネジメント層として海外拠点に赴任された日本人の方が最初に気付くのは、出てくる数字の不確かさ、ではないでしょうか。売上見込、売上実績と粗利率、在庫回転率、製造予実と原価差異など、ごく基本的な経営指標が出てこない、または出てくるまでに時間を要しかつ不正確であったりします。
この状況の原因の一部(または大部分)はもちろん、統合された業務システム基盤の構築が不十分で、各データをマニュアルで管理していたり複数システムから寄せ集めたりしているからであることは、すぐに推察ができます。ただし「いま何故そうなっているのか」を掘り下げて理解するには、非常な困難が伴います。例えば、
- 入社した時からこのやり方なので、不便だがそいういうものだと思っている
- 前任の日本人上司に改善を提案したが、理由不明のまま却下された
- システムベンダーに、現在使っているERPでは実現できない機能だと言われた
- 我々の業務は特殊で複雑なので、このプロセスはExcelで実施した方が良い
- 製造部門がシステム入力に手間がかかると言っており、手書き記録で済ませている
など、聞けばこういった一次的な理由が返ってきます。言語的な意思疎通の問題もあり、更に人によって言っていることが違ったりして、どれが本当な理由なのかもはっきりしません。
本来はIT部門が、こういった課題、その原因と改善点の取りまとめをリードすることが望ましいのですが、アプリケーション開発の経験があるIT部門であっても、多くの場合は各業務部門個別の要望に応えるアプリの開発が中心であったりするため、部門横断的な意見の調整と取りまとめを期待するのはなかなかハードルが高いのが実情です。
結果として、弊社では以下のようなお困りごとをご訪問先の日本人マネジメント層の方から良くお聞きします。
- システム改善の要望は各部門から多々リストアップされているが、業務上どの程度の重要性があるのか、投資に値する課題なのかが分からない
- 改善要望が各部門の業務の個別最適化になっており、全社としてどんな効果が発揮できるのか、企業価値・競争力の向上につながるのかが分からない
- ERP製品の機能の比較ばかりしていて、そもそも自社として何をシステム上で実現することがマストなのかが決まっていない
こういった状況の中で、各部門・各現場の業務成立性を担保しつつ、有るべきERPシステムの要件をまとめあげ、ERPベンダーから適切な見積・提案を得るためにはどうしたら良いのでしょうか。次回のコラムではこの点について述べてみたいと思います。
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