タイ現地日系企業における、ERPシステム選定の難しさとは(2)

有るべきERPシステムの要件をまとめる、には?

前回のコラムで述べたようなタイ現地日系企業の現状を踏まえて今回は、ベンダーへの見積依頼の前提条件となる「有るべきERPシステムの要件」をどのようにまとめたら良いか、について述べてみたいと思います。

タイ現地に赴任して間もない日本人マネジメントの方であれば、検討のはじめにまず確認したいのは、「現状の業務フローがどうなっているか」ではないでしょうか。確かに、自分の会社で誰がどんなプロセスで業務をしているのか分からなければ、その課題と優先度を整理して新しいシステム要件を定義することもできません、実際に、自力で社内業務フローをまとめられているお客様にも何度もお会いしたことがあります。

ただしERPシステム導入検討にあたっては、こういったフローが直接的に役に立つことは実は稀です。主な理由は以下の通りです。

  • (業務部門主体でまとめた場合)業務プロセスの記述粒度が粗すぎたり不統一で、システム検討に必要な粒度や品質を満たせない
  • (IT部門主体でまとめた場合)システム処理フローの観点に偏りすぎており、業務的な観点が抜け落ちている
  • たとえ現状業務フローがあっても、改善のために変えられる業務、変えられない業務が分からない(前回コラムで述べた通り、「なぜ現状そうなっているのか」の掘り下げが必要でありながら、やってみるとそれが容易にはいかない)

こういった事情から、コンサルティングファームやシステムベンダーといった外部企業(以下、ベンダーと総称)に現状調査を依頼される企業様は数多くいらっしゃいます。外部の客観的な視点から、業務部門およびIT部門へのヒアリングを通して現状業務/システムフローとその課題・改善点をまとめることは、大いに意味があるといえます。

ベンダーに依頼する主なメリットは以下の通りです。

  • ベンダーがサービスとして定める記述ルールに沿って業務フローや課題一覧が記述されるため、記述粒度が統一された一定の品質のドキュメントをもとに、自社の現状を理解することができる
  • 社内の人間関係や力関係といったバイアスに左右されない、企業の正しい現状を把握することができる(声の大きい一部のマネージャー層だけでなく、実際に現場でオペレーションをしているスタッフの課題感も拾い上げることができる)
  • ベンダーがもつ他社の類似事例を参考にすることにより、「今までこのやり方でやってきたから」という思考停止で議論が進まない状態から脱却し、課題解決に向けて新たな視点で議論をすることができる

しかし実際には現状調査と一言でいっても、提供されるサービス内容はベンダーにより千差万別であり、上記のようなメリットが必ずしも100%得られるわけではありません。では、どのようなベンダーに現状調査を依頼するのが良いのでしょうか?

ベンダーに現状調査を依頼する際の留意点①:現地のスタッフとタイ語で密にコミュニケーションが取れること

現場のオペレーションの主体がタイ人である以上、ヒアリング対象も当然タイ人中心になります。したがってベンダーがタイ語でのコミュニケーションが取れることは前提として至極当然に思われるかもしれませんが、実際には以下のように、その通りにならないケースも存在します。

  • 本社が主導するグローバル統合システムの検討プロジェクトで、本社が契約した日本のコンサルティングファームが出張訪問で現状調査を実施するため、コミュニケーションは英語が原則
  • タイにある日系のシステムベンダーで、ヒアリングをリードするシニアコンサルタントは日本人であり、タイ人のコンサルタントは通訳兼アシスタントレベル

弊社のこれまでのプロジェクト経験の限りではありますが、ASEAN周辺国と比べてタイの業務スタッフは、現地語での密なコミュニケーションをより強く要望する印象があります。タイ語通訳や英語を介して、ある程度はヒアリングが成立しているように見えても、本音では自分たちの言いたいことが伝わっていない、理解されていないという不満からプロジェクトに対するモチベーションが低下し、現場の本音や課題感が十分拾い上げられない結果となるリスクが伴います。

ベンダーへの依頼にあたっては、ヒアリングをリードできる十分な経験を持ったタイ人のコンサルタントが、主体となって現状調査を進められるかどうか、ご確認いただくことをお勧めします。

次回のコラムでも引き続き、現状調査をベンダーに依頼する際の留意点について述べてみたいと思います。

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