タイ現地MES導入プロジェクトの実態②

前回は、MESシステムとは何かについてご紹介させていただきました。

今回はその続きとして、MES導入についてコラムを執筆したいと思います。

本稿が皆さまのご参考になれば幸いです。

なぜタイでMES導入が難しいのか?

「MESは重要である」と理解していても、実際の導入プロジェクトでは多くの企業様が様々な課題に直面します。特にここタイにおいては、日本国内とは異なる特有の事情が存在します。

まず1つ目は、現場オペレーションの属人化です。

タイの製造現場では、熟練作業者の経験や勘に依存しているケースが多く、作業手順が標準化されていないことが少なくありません。そのため、MES導入により工程を可視化・標準化しようとすると、「現状業務の整理」自体に多くの時間がかかります。

例えば、

  • 作業手順書が存在しない、または実態と乖離している
  • 品質チェックが紙運用で、記録の粒度がバラバラ
  • 不良原因が「人依存」で体系的に記録されていない

といったケースは珍しくありません。


2つ目は、ITリテラシーと教育の課題です。

MESは単なるシステム導入ではなく、現場での運用定着が成功の鍵となります。しかしながら、

  • 作業者がPCやタブレット、ハンディターミナルの操作に不慣れ
  • システム入力に対する抵抗感
  • 言語(タイ語・英語・日本語)の混在

といった要因により、導入後に**「使われないシステム」になるリスク**もあります。

特に、多国籍環境の工場では、UI/UX設計や教育設計が不十分だと、現場への浸透が進まず、期待された効果が出ないケースが見受けられます。


3つ目は、ERP・設備との連携の難しさです。

MESは「つなぐシステム」であるため、周辺システムとの連携が不可欠です。しかし現実には、

  • ERP側のデータ整備が不十分
  • 設備側にデータ取得インターフェースがない
  • 古い設備(レガシー機器)が多い

といった理由から、システム連携に想定以上の工数・コストが発生するケースが多くあります。

特にタイでは、中古設備や多様なメーカーの機器が混在していることも多く、標準的なインターフェースでは対応できない場合もあります。


4つ目は、プロジェクト推進体制の課題です。

MES導入はITプロジェクトであると同時に、業務改革プロジェクトでもあります。そのため、

  • 日本本社主導 vs タイ現地の実態
  • IT部門と製造部門の認識差
  • 現場の巻き込み不足

といった点がプロジェクトの成功可否を大きく左右します。

特に多いのが、日本本社で設計したテンプレートをそのままタイに適用しようとして、現場に合わないというケースです。結果的に、現場からの反発や形骸化を招くことになります。

成功に向けたポイント(実践的視点)

では、このような課題を踏まえ、どのようにMES導入を進めるべきでしょうか。タイでの実プロジェクトを通じて見えてきた重要なポイントをいくつかご紹介します。

① スモールスタートで始める

最初からフル機能導入を目指すのではなく、

  • トレーサビリティ
  • 工程実績収集
  • 入出庫管理

など、効果が見えやすい領域から段階的に導入することが重要です。


② 現場起点での業務整理

システムありきではなく、現場の業務フローを可視化・整理した上で、MES要件を定義する必要があります。


③ 多言語・使いやすさを重視した設計

タイ語対応はもちろん、直感的に操作できるUI(アイコンベースなど)を採用することで、現場定着率を高めることができます。


④ 現場リーダーの巻き込み

現場のキーパーソンを早期から巻き込み、「自分たちのシステム」としての意識を持ってもらうことが成功の鍵となります。

まとめ

MESは製造現場の高度化・効率化において非常に有効な仕組みですが、タイにおける導入は単純なシステム導入ではなく、現場改革そのものと言えます。

「システムを入れる」のではなく、

「現場を変えるためにMESを活用する」

という視点が成功のポイントです。

今回のコラムはここまでです。ご質問、ご相談事等ございましたら、お気軽にご連絡ください。

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