システム担当者向け タイ会計税務の基礎知識 第1回 (2026年6月)
Date : 16-06-2026
〜経理業務上、揃えておくべきシステムについての一般論〜
【今回のポイント】
- 販売・在庫管理業務が最優先
- 製造業の場合
- 会計ソフトについて
【解説】
1. はじめに
新たにシステムを導入する、若しくは既存のシステムを他社のものに変更するには、当地の実務も理解した上でタイ人スタッフの積極的協力を得ながら進めなければなりませんので、日本で進めるよりも多くの労力と時間を必要としますが、会社マネジメントや経理の観点からの導入システムの優先順位についてみていきたいと思います。
2. 販売・在庫管理業務のシステム化が最優先
マネジメントが会社経営にて必要とする情報としては、まず売上と原価でしょう。適切なタイミングで正しい請求書を発行し契約期間内に売掛金を回収し領収書を発行する、この一連の売上サイクルに対応した原価管理を正確に行うべく、仕入れと在庫勘定への入りと払出し、買掛金の支払いの流れがスムーズに進む体制が必要となります。タイではこの事業上の基本業務がエクセルで行われていることが多く、エクセルでの作業では金額の入力間違いや情報の断絶を伴い、スタッフの作業キャパにも限界が生じるため、まずもってこの部分のシステム化が最優先と考えます。
経理的にまた会計監査においても、売掛金、在庫及び買掛金に係る回収・支払漏れや滞留情報についてはAging Listにても確認することになりますが、システムを導入していれば自動で作成されると思いますので、各所からの提出要求に対しタイムリーな対応が可能となります。加えて、実際に滞留が生じている場合にも、タイムリーに情報を各所にシェアし、貸倒引当金の計上や、在庫の評価減や廃棄処理等の対応を直ぐに行えることになります。
3. 製造業の場合
製造業の場合についても、自社で販路拡大を行っている場合には販社同様、販売管理システムがまず優先されると考えます。しかしながら製造業における原価管理は経営上の重要事項であり、ともするとブラックボックス化し易いため、自社に有った適切なシステムを導入したいという、マネジメントや工場長、経理側の意向が強いと感じます。また工場長をタイ人に任せたいと考えている場合にも、現場の稼働感覚に数値的な勘を持ってもらう目的においても必要でしょう。
原価管理は、材料費、労務費、工場設備償却費、工場経費に関する費用管理に加え、材料高と仕掛品及び製品の残高管理が必要ですので、経理的な面からもより複雑な管理となります。加えて、現場社員による原材料や製品の横領や盗難が関係者と結託して行われることがあるため、現場でのタイムリーな入庫払出し処理と、そのデータに異常値がある場合のアラーム、加えて定期的な実棚管理による差異分析を行わなければなりません。製造現場が同じ敷地内でも離れていたり、離れた複数の同社内製造工場間で仕掛品や半製品等の出庫・入荷が行われる場合はなおさら適切なシステムによる対応が必須となります。
4. 会計ソフトについて
会計のデータは、販売や製造からの正確な情報を吸い上げたものでなければなりませんので、まず現場のシステムが適切に稼働できている前提となります。もしそこでのバグが放置されたまま会計データに取り込まれてしまうと、財務諸表に異常値が生じ、その解明に現場と経理との間で不要な負担がかかってしまいます。
親会社等への毎月の財務報告を行う必要がありますので、安定運用まで待つ時間は無いでしょうから、会計は既存のシステムで進めて、販売管理や製造管理がスムーズに運用された時点で、現会計システムと一定期間並行して運用していくことになると考えます。
ご参考までにタイで一般に使われている会計ソフトをご紹介しますと、
- ローカル系: Express、CD Organizer、Ban Chiang、Winspeed、Auto Flight、Peak Account、Flow Account、SME Moveなど
- 外来系: Quick Books、Xero、MYOB、GLASIAOUS、Multibookなど
- ERP: Microsoft Dynamics 365、SAP、SAGE 300 (旧ACCPAC)、A.S.I.A.、Formula、Oracleなど
近年ではタイローカル系であっても、クラウド型が一般的となっております。
タイではExpressが20年以上前から大学の会計学科等での教材用会計ソフトウェアとして使用されてきたこともあり、また簡易型ERP機能を有しており、請求書発行から在庫管理、固定資産管理まで行える、しかも廉価で購入できることもあり、圧倒的なユーザー数を誇ってきました。ただし、MS-DOSをOSとしているような感じで、インターフェースも懐かしい感じの古さで、機能の融通性が乏しいなど、近年での使用に際しては少し使いにくくなってきたように個人的には感じます。
終わりに
この度はご拝読頂きありがとうございます。これから2年間にわたって主として会計や税務の観点からのトピックを2ヵ月に一度寄稿いたしますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
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